転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


88 ステータス画面の魔法は秘密ね



「えっ、できないの? みんな?」

「ええそうよ。そして鑑定士になるには長い時間をかけて修行をする必要があるの。だから魔法が使える鑑定士なんて殆どいないし、その殆どいない魔法が使える鑑定士も長命種のエルフくらいしか居ないから使える魔法も自然にドルイド魔法や精霊召還魔法に限られるわ。だからね、ルディーン君。普通の魔法使いが使う魔法のステータスを見ることができる人はいない。多分あなただけよ」

 えっ、そんな! そんなわけ無いよ、だって。

「でもでも、みんな魔法使ってるよね? ならなんで魔法を知ってるのさ? ステータス画面が見られないなら魔法だって知らないはずなのに」

「それについては前に話したような記憶があるのじゃが、忘れてしまったのかい?」

 ロルフさんにそう言われて、僕は前にロルフさんに会った時の事を思い出した。

『魔法に使われている言語はのぉ、実はこの世界の外からもたらされた物と言われておるのじゃよ』

 そうだ、ロルフさんが前に言ってたっけ、この世界の魔法はビシュナ様から教えてもらった異世界の言語を元にこの世界で作られたんだって。
 と言う事はこの世界の魔法はドラゴン&マジック・オンラインによく似てるけど、まったく違うもんって事なのか。

 そう言えば僕の知らないサーチって魔法もあったもんなぁ。
 案外僕が知らない魔法はいっぱいあるのかも。

「この世界の魔法は神様が教えてくれた言葉の意味を調べて、それを使って作られてるんだったね」

「うむ、その通りじゃ。じゃからステータスなど見られなくとも、魔法を広める事ができたのじゃよ」

 そっか、それなら確かに誰もステータスを見れなくても問題ないね。
 ん? あれ? でもちょっとおかしくない?

「ねぇねぇ、でもさぁ、鑑定士の人たちは自分以外のステータスを見れるんでしょ? なら魔法を使える人のステータスを見ればいいんじゃないの?」

「それは難しいじゃろうて。鑑定士が見ることのできるステータスはその者の強さとジョブ、後はパッシブとか言うスキルだけと言う話じゃ。魔法や戦士などが使う攻撃スキルは見ることができない。確かそうじゃったのぉ? ギルマスよ」

「ええ、確かそのはずです」

 なんと、ステータスってそんな制限があったのか。
 そう思って僕は前世の記憶を引っ張り出した。
 すると確かに他人の魔法の欄を見ることができなかった記憶があるんだよね。

 う〜ん、ゲームだと誰でも同じレベルで同じ魔法を覚えるから、レベルとジョブさえ解ればわざわざ見る必要も無かったからそうなってたのかも。
 
「じゃあさ、僕が今使える魔法をみんなに教えた方がいい?」

「いや、それは止めておいた方がよいじゃろう」

「何で? みんなが知らない魔法があるかも知れないのに」

 僕しかドラゴン&マジック・オンラインの魔法を知らないのなら、みんなに教えてあげた方がいいんじゃないの? そんな風に思ったんだけど、ロルフさんが言うにはそれをするともしかしたら危ないかもしれないんだって。

「魔法というものは今でも色々な所で研究されておってのぉ、それには多くの利権が、金が絡んでおるのじゃよ。それなのにレベルが上がるだけで新たな魔法を知る事ができる者が現れたとしたらどうなると思う? まず間違いなくその者を捉えて、その新たに齎される魔法の数々を自らの手柄にしようと考える者が出てくるじゃろうて」

「でも、僕捕まったりしないし、もし捕まっても悪もんなんかに魔法の事、話さないよ!」

「ルディーン君はそのつもりでも、もし周りの者が巻き込まれたらどうするのじゃ? 君の大事な者たちの中に力無き小さな者は居ないのかね? そしてその者を人質に取られても、君は魔法の事を話さずにいられるのかな?」

 そう言われたら僕は黙るしか無い。
 だって悪もんにスティナちゃんが捕まったりしたら大変だもん。

「解ってもらえたようじゃな。今回はわしとギルマスしか居らなんだからよかったが、これからは自らのステータスで魔法を知る事ができると周りには洩らさぬよう気をつけるのじゃぞ」

「うん、解ったよ。僕、ちゃんと内緒にするね」

「うむ。それが賢い選択じゃ」

 もしかしたらみんなの役に立つ魔法があるかも知れないけど、大人のロルフさんがそう言うのなら多分そっちが正しいんだと思う。
 だから僕は、もうけしてこの話は他でしないって決めたんだ。

「ところでルディーン君、作れるようになった上位属性の魔石は氷だけなのかのう?」

「そう! そうですよ。風の上位属性である雷とか火の上位属性である振動の魔石は? 個人的には土の上位属性である植物の魔石が作れたりしたら嬉しいんだけど」

「えっと、今はまだ氷の魔石しか作れないよ」

 振動ってのはよく解んないけど、雷の魔石は20レベルの攻撃魔法ライトニング・ブレイクが使えるようにならないと作れないと思う。
 それに植物の魔法はドルイド系統だから、多分賢者では覚えないんじゃないかなぁ?

「そうかぁ、残念です。でもまぁ植物の魔石はドルイドしか作れ無いとも言われていますから仕方がありませんね」

「なんだ、じゃあ僕に作れるはず無いじゃないか!」

 やっぱりドルイドの魔法で作る魔石なんだ。
 それじゃあ僕がいくら頑張ったって作れるはず無いのに。

「いえ、ルディーン君は魔法使いと神官の魔法を両方使えるでしょ? それならもしかしたらドルイドの魔法も使えるんじゃないかな? なんて都合よく思っちゃったのよ。ごめんなさいね」

 なるほど、二つの系統の魔法が使えるから、もしかしたらって思ったのか。
 じゃあしょうがないね。

 でも、ならちゃんと使えないよって言っておかないと。

「ドルイドの魔法は無理だよ。後、下位の精霊さんは呼べるけど、精霊さんたちが使う魔法も使えないよ」

「そうよねぇ。いくらなんでも全ての属性魔法が使えるはず無いわよね」

 賢者はあくまで魔法使いと神官の魔法しか使えない。
 だから当然ドルイド魔法や精霊魔法、そしてもちろん死霊魔法も使えないんだ。
 そんな万能なジョブがあったら、他の魔道士ジョブがみんないらなくなっちゃうもんね。

「うん。だから植物の魔石はドルイドの人に作ってもらってね」

「ええ、そうするわ」

 そう言ってバーリマンさんは笑ったんだ。


 これはちょっと余談になるんだけど、少しだけ未来の僕はこの時の話が元でちょっと困ってしまう事になる。
 と言うのも、12レベルで覚えるアース・バインドが植物系魔法だったからなんだ。

 この時の僕はアース・バインドと言う名前から、この魔法も土系統の魔法だと勝手に思い込んでたんだよね。
 ところが、いざ使えるようになってみるとこの魔法は近くにある木や草、もしそのどちらも生えてなかった場合は土の中から木の根っこのようなものが生えてきて相手を拘束して動けなくする魔法だって解ったんだ。

 そして植物系魔法を覚えた以上、当然植物の魔石も作れるようになったわけで……。
 一度作れないと言ってしまった事から、僕がこの事をバーリマンさんに話せるようになったのは植物の魔石が作れるようになってから1年ほど後になってしまったんだ。

 バーリマンさん、ごめんなさい。


 この後僕は、ロルフさんに頼まれて幾つかの無属性魔石を氷の魔石に作り変え、

「なんと、こんな冷蔵庫の作り方もあったのじゃな」

 さっき話しかけた、家で作った氷で冷やす冷蔵庫の作り方も教えてあげたんだ。

 普通の冷蔵庫なら結構大きな魔石が、家庭用でもブラックボアくらいの魔物から取れる魔石が必要なんだけど、このイーノックカウ近くの森ではそんな大きな魔石は滅多に取れないから小さな魔石で氷を作って冷やす、この冷蔵庫の方が便利だと思ったからね。

 そしたらロルフさんとバーリマンさんはとっても喜んでくれた。
 二人が言うには今までこの街には氷の魔石を作れる人がいなかったらしくて、いる時はもっと大きな街から買わないといけなかったからとっても高かったんだって。
 だからそんな小さな氷の魔石でも冷蔵庫が作れるのなら、多くの人が助かるだろうってね。

「それにこれからはルディーン君がいるもの。氷の魔石が必要な時はお願いね」

「うん! 僕、頑張っていっぱい作るよ」

 こうして僕は、イ−ノックカウに来た時は絶対に錬金術ギルドに寄るって言う約束をバーリマンさんたちとしたんだ。


 ボッチプレイヤーの冒険が完結したら、この作品は別の場所に投稿を開始します。
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